洗濯物を干す

美術館で　アメリカの画家　

アンドリュー・ワイエス展　を鑑賞した。

その中に　洗いざらしの真っ白な衣類が　

光をいっぱいに浴びて　風になびいている絵があった。

のどかな生活、そして元気に動き回る

子どもたちの姿が　浮かぶようであった。

その絵の影響かどうかは知らないが、

私は洗濯物を干すのが好きだ。

母は　強い日差しから色あせを防ぐため、

裏返して干すように言った。

「でも、下着はそのままよ。

　下着は裏の方が大事だから」

虫でも付いたらいけない　ということらしかった。

別居していた父が　糖尿病を患って入院した時、

大好きな洗濯物の絵を　画集から切り取って額に入れ、

見舞い品にした。

すると、以前持っていった　八木重吉の詩集を

「僕はもう読んだから、他の人にあげなさい」

と言って返された。

だけど、ワイエスの絵は返ってこなかった。　

父も気に入ったのだろう。