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Books Healing

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かつて猛烈な艦砲射撃の後、沖縄本島に米軍が初めて上陸した読谷村渡具知の浜

 

 

私の大切にしている本の中に

コルチャック先生のいのちの言葉

ヤヌシュ・コルチャック著 

サンドラ・ジョウゼフ編著 津崎 哲雄訳 

明石書店 というのがあります。

 

もしこの言葉が綴られた当時の状況を知らなければ 

児童精神科医佐々木正美先生の著した

「子どもへのまなざし」のように、

穏やかで真摯な態度で子どもたちに接した人の 

単なる育児書のように感じたでしょう。

 

驚いたのは、この本がユダヤ人として自分も、

孤児院で世話している子どもたちも

命の危険に晒されている大戦の最中に

書かれたものだということです。

 

医者として文学者として 孤児の世話と子どもの教育に

生涯を捧げた人でした。

 

最期は コルチャック先生が生き延びるように

手立てを尽くした友人たちの懇願を振り切って、

200名の孤児たちとともに

トレブランカ強制収容所ガス室へと向かいました。

 

コルチャック先生と子どもたちの死の行進は

伝説となりました。

 

彼らは頭を高く上げ、人としての尊厳を失うことなく

行進していったのです。

 

行進を目撃した人々は

「生涯あの光景は決して忘れません」と言います。

強制居住区の警察官たちはコルチャック先生を見ると

急に姿勢を正し、敬礼をしたそうです。

 

「私は誰に対しても怒ってはいません。

 誰に対しても悪いことが起こるように

 祈る気持ちはありません。

 そんなことは私にはできません。

 そんなことをどうして人間ができるのか、

 私にはわかりません」ヤヌシュ・コルチャック

 

 

コルチャック先生と並んで 

それでも人生にイエスと言う」V・E・フランクル著 

春秋社 があります。「夜と霧」の著者です。

強制収容所で過ごす自身の体験を

精神科医としての視点から書き起こしたものです。

 

どちらの本も 考えうる限り最も過酷と思える

状況の中にあって 時にはユーモアさえ交え 

自分を客観視し 他人を思いやる心が 

人にはあるのだということを

身をもって示してくれています。

 

さらにフランクル

作家の責任という文章を遺しています。

 

「人生の明らかな無意味さに対する

 絶望の地獄をくぐり抜けてきた作家なら、

 みずからの苦難を人類の祭壇に、

 生贄として捧げることができる。

 そのような自己開示によって、

 同じ状況に苦しんでいる読者を救い、

 困難に打ち勝つよう、

 手を差し伸べることができるのである。 

 もし作家に『絶望に対する免疫力を読者に与える』

 だけの才能がないのであれば、

 せめて読者に『絶望という菌を植え付ける』

 ことだけは慎むべきである」

 

 

私の文章はどうなんだろう。

100年後に読んでも、気持ちのいい文章だろうか。

勇気づけられたり、元気になったり、

ほっとしたりするものだろうか。

自分や人を信じて歩みだそうとする

助けになるものだろうか。

そんな事を考えながら書いています。

 

文章による癒し、本による癒し、

Books Healingは、フランクルの言葉です。

 

 

 

 

上記の文章中に両著書からの引用を含みます。