歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

追いつけない

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バス停に向かって歩いている途中 

おばあちゃんを追い越した

すると後ろから

「ねえさん 運動選手ねぇ? 

あっしゃ 追いつけないさー」

と言いつつ 必死にピッチを上げている様子

 

え? な、なんで? なんで追いつく必要があるん?

 

ユンナユンナーアッチミソーレー」

ゆっくりゆっくり歩いてください

声かけしながら 

いつもの早歩きの習性のままバス停に着いた

バスが早く来たら 

おばあちゃんがたどり着くまで待たせておけるかも

 

バス停のベンチには 青年が座っていた

数分遅れてやってきた おばあちゃんは

「おばぁも休ませてねぇ」

青年をベンチの端に追いやって 

どっこいしょ と腰掛けた

 

それから始まった

「えー 兄さん 

おばぁは艦砲射撃でこの足撃たれたんだよー

それなのに歩いてるって不思議と思わんねぇ?」

延々と戦争と足の話しが続く・・・

それこそ機関銃のように・・・

居合わせた青年が とても いい奴で 

その勢いにとまどいながらも 

うんうんと相づちを打って聞いている

 

「バスが来ましたよ」

わたしが声を掛けると 青年がさっと立ち上がった

 

おばあちゃんが言った

「おばぁの家はすぐそっちさ あんたたち行きなさい」

 

話したかっただけなんだね

もっとゆっくり歩いてやればよかった