歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

アファメーション

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「私は豊かである。 私は満たされている。 

私は美しい。 私は軽やかである。

私は優しい。 私は大らか。 私は賢(かしこ)い。 

私は溌剌(はつらつ)としている。 私は・・・」

 

「母ちゃん、鏡の前で なにやってんの?」と、

タカシが聞いた。

アファメーションじゃ。 

肯定的な言葉で自分を鼓舞(こぶ)する。 

そうするとな、ほんとにそうなる」

 

「それって、自分をだますってこと?」

「あほ! 真(まこと)のことじゃ」

 

「ぷっ! 『私は豊かである』だって? 

いつも お金無い お金無いって言うくせに」

「なにを言うか! 

講習会受けた後の母ちゃんは違うぞ! 

千円しかない――ではなくて、

千円もある、って思うんじゃ」

 

「ちっとも満たされてないじゃん」と、

あくまで疑うタカシ。

「風呂見てみぃ。 

いっつも満タン水張っとるでしょが!」

 

「美しい? 

韓国行って、プチ整形したいって言ってたじゃん」

ブルドッグと母ちゃんの鼻とどっちが高い? 

ほれ、言うてみ」

 

「重そうに階段上ってるし――」

「財布は軽やかじゃ」

 

「しょっちゅう怒るじゃん」

「あれは 発声練習じゃ」

 

「十円なくしても、大騒ぎするくせに、

なにが『おおらか』なんだよ」

「あ、それだけどね。 

この前、八百屋の兄ちゃんに言われたの。 

『おばちゃん。この頃、輝いてるね~。オーラか?』

な~んちゃって。 ダッハッハ」

 

「学校の成績良くなかったって、

おばあちゃんから聞いてるよ」

「その、おばあちゃんよりは良かったの!」

 

「背中丸まってるよ。 『はつらつ』なんでしょ?」

「背中も丸いが、腹も丸い。 

どーじゃ、このはりきった腹は! 

それ、ぽんぽこりん!」

 

「母ちゃんには、まいるよ。 

ちっともめげないんだから。 

でも、ぼくは どうしても『頭がいい』なんて 

うそは言えないな」

「ああ、そりゃ無理。 

いくらなんでも、そりゃ~無理」

 

「ひどいな。 

じゃあ ぼくは どうしたらいいの?」

「そういう時はね、『つつある』って言うんだ」

 

「つつある?」

「タカシは頭が良くなりつつある。 

タカシは金持ちになりつつある。 

タカシはお母ちゃんの手伝いをしたくなりつつある。 

タカシはお使いに行きつつある。 

買い物かごをお母ちゃんから受け取りつつ

・・・あれ? どこ行った? 

これ! タカシ! 待たんかー!!!」

 

 

 

おちゃらか おちゃらか おちゃらかほい

健闘を祈る おちゃらかほい