歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

ご恩返し

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私は転勤族でしたので、

あちこちの街にお世話になりました。

 

福岡の香椎という街では、乗馬を始めたり、

ベルカント唱法を学んだり、合唱したり、

地域の皆さんに交じって

早朝の太極拳参加させて頂いたりしました。

お陰様で沢山の友だちも出来ました。

 

それで、この街を後にするにあたって、

ふと、ご恩返しがしたいという気になりました。

何をしようかと考えているうちに、

ある情景が浮かんできました。

 

官舎から駅へと向かう途中の歩道橋でのことです。

自転車用の通路もあり、エレベーターも設置された、

四方向から昇り降りできる大きな歩道橋を、

私はいつものようにトントン上って行きました。

 

そして直線通路の真ん中あたりで、

コーヒーの空き缶を見つけたのです。

歩道橋からの眺めを楽しんだ後に、

誰かが足元に捨て置いたのでしょう。

 

見たくなかった。

 

下は往来の激しい道路です。

もし、この空き缶が落っこちたらどうなることか。

そう思いながらも、私は拾いたくありませんでした。

 

そして、その場から逃げるように 

渡り切ってしまったのです。

 

忘れようと押し込めていた記憶が蘇り、

胸がチクチクしました。

 

「歩道橋の掃除をしよう」と、決めました。

 

翌朝早く、箒と塵取り、ゴミ袋、割り箸数本、

雑巾と軍手を持って出かけました。

いざ、お掃除おばさんとして立ち向かうと

 

めっちゃ、デカイやん!

 

心が折れそうになりました。

でも、いくらなんでも ここまで来て

引き返すわけにはいきません。

腕まくりして始めました。

 

そういえば、歩道橋の掃除はどこの管轄なんだろう? 

とか考えながら、

こびりついたガムをはがしたり、

苔のようなカビを取ったり、

吹き溜まりの吸い殻を集めたりしながら、

一時間位かかったでしょうか、

ようやく終えることができました。

 

「いつも使わせていただき、ありがとうございました」

 

一礼して、帰りました