引きこもり

リコさんの息子のコウくんは

小学校四年生のときに　いじめられたのがきっかけで　

登校拒否をおこし

そのまま　引きこもりになってしまいました。

勉強の方は　学校の先生が　時折やってきて　

見てくれましたが

そのほかは　家族以外話す人もなく　

部屋にこもって　ゲームをしたり　

漫画を読んだりして過ごしていました。

優しい子で　リコさんの肩を　よくもんでくれました。

中学を卒業すると　リコさんが　

もと勤めていたレストランの

コック見習いとして　働くことになりました。

職場のみんなも　事情をわきまえていて

コウくんを　支えてくれました。

毎朝　リコさんは　祈るような気持ちで　

コウくんを送り出します。

そうして　「ただいま」　の声を聞くと　

ほっとするのです。

今日は　もった。

今日も　もった。

一週間　もった。

そうして　一ヶ月が過ぎました。

今日は　待ちに待った　初月給の日です！

リコさんは　コウくんの好きなものを　

たくさん料理しました。

壁には大きな紙に　おめでとう　と書いて貼りました。

帰りを　いまかいまかと待っていると　

コウくんから　電話がありました。

「友だちと　遊んでくる。　遅くなるから」

リコさんは　胸がいっぱいになりました。

初月給よりもっと　もっと　もっと　

うれしい出来事でした。