健診で引っ掛かり 紹介された大学病院の先生が
ミキコに言った。
「癌決定だよ。そっちの先生は 言わなかったの?
近頃は はっきり告知するもんだけどねぇ。
手術 ―― それ以外の選択肢は考えないように」
手術の日程その他は 病院会議で決まり次第
連絡しますから と 実にそっけない対応。
ショックを受けたものの、
事務的に流されてしまって 不安を出すすべもない。
辞職を告げた上司は 翌日
でかでかと墨字で書いた色紙を持ってきた。
「生々流転」万物は生死をくり返すものだよ、君。
友だちが 引き合わせた 神父は言った。
「誰でも、みんな 死ぬんです」
んなこたぁ わかってるよ!
冷めたツラして言うんじゃねーーーーー!!!
クゥ~ン クゥ~ン と
シロが 心配そうに すり寄ってきた。
「お前だけだよ。 心の側に居てくれるのは。
泣いていい? 恐いって言っていい?
そのあと、 抱きしめていい?」