歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

赤ちゃん

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「子どもができただと!」 

妊娠を告げた時の 両親の反応は 

激怒に近いものがありました。 

無理もありません。五年も付き合っていながら、 

トモヤとは まだ 結婚もしてないのですから。 

 

それに、 やっと念願の看護婦になって 

さあ これから バリバリ働くぞ! 

という矢先だったのです。

職場の人にも 申し訳が立ちません。 

それでも、 カオリの中には 

産むという選択肢しかありませんでした。

 

記念撮影だけの 慌ただしい祝言をしたものの、 

トモヤの 少ない給料では 

アパートを借りることも出来ず、 

二人して カオリの実家に転がり込みました。

 

だんだん大きくなるお腹とともに 

カオリの気も重くなっていくようでした。 

両親の機嫌も なかなか良くなりません。 

誕生を喜ぶどころか、 

やっかいものを背負うような空気がありました。

 

ところが、 です!

2600グラムの天使が 舞い降りたとたん、 

飯沼家の雰囲気がガラリと変わりました。

屈託のない笑顔を前にして、 

誰が ブスッとしていられるでしょう。

なかでも、 一番怒っていた 父は 

アリサと 名付けられた孫に もうメロメロ。

 

「アリサちゃ~ん。おじいちゃん、 

 お仕事行ってきまちゅよ~」

「アリサちゃ~ん。おじいちゃん、

 帰ってきまちゅたよ~ 」

 

これには、母も 「カオリの時とは 大違い」 

と あきれていました。

その母も、

「赤ちゃんには 十人の大人も叶わないね 」 

とニコニコ。

それまでは「早く二人で自立した生活をしなさい」 

と せかしていたのに、いまでは

「みんなで 子育てするのもいいんじゃない」 

な~んて 言ってます。