歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

自分の作品

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チケットをいただいて、

久しぶりに観劇の機会を得た。

親子の絆を描いた一人芝居であるが、

胸に迫るものがあり、素晴らしい出来であった。

 

その脚本を書いたのは、

かつて地方都市の戯曲大賞を受賞した人である。

舞台化の話があり、

東京からその地方にしばし滞在して、

劇作りに励むこととなった。

 

ところが、

地元の演出家や役者たちにあれこれ言われて、

どんどん書き直しをさせられる。

しまいには、

自分の作品なのか何なのかもあやふやになり、

思いあまって相談にみえた。

 

「もう、どうしていいか、分からないんです。 

地元のことは、地元の人間が

一番よく知っていると言われれば、

やはりそうなのかな と思いますし・・・」

 

「でも、その地元の審査員が、

あなたの作品を大賞に選んだのでしょう?」

「それは、そうなんですけど・・・」

 

「人は、言いたい放題言うものよ。 

確かに言葉尻を捕らえると訂正を加える部分が

出てくるかもしれないけれど、

これを書いた時の情熱の方が大事。

 

太陽の光が「サラサラ」流れるって

感じる詩人もいるんだし、あなたの感性、

これは私が書いたんだって、

自信と責任を持って言えない作品は、

つまらないじゃない。

パッチワークじゃあるまいし、

なんでも取り入れる必要はないのよ」

 

彼女の瞳が輝いて、よし!と唇をきゅっと結んだ。

 

仕上がった劇は、面白く、

その後の彼女の活躍も目覚ましかった。

国内のみならず海外でも、

名だたるアートシーンで受賞したという。