歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

プラマイ0

f:id:tamacafe:20210814114904j:plain

 

「ほい、タカシ。 ちょっと肩もんでおくれ。 

あ~あ、くたびれた。 

あの、ばあさんち、草ボウボウじゃ」

洗った草刈り鎌をベランダに立てかけて、

タオルで汗をふきふきツネミが言った。

 

「また、どこかでボランティアしてきたの? 

いいかげんにしないと、もう年なんだから」

めんどくさそうに肩をもみながら言うタカシ。

 

「なんとおっしゃるうさぎさん!

(うさぎじゃねぇって) 

年だからこそ、年金貯めねば」

 

いつもながら、訳の分からん事を言い出すツネミに、

タカシがとまどいながら聞いた。

「年金?」

 

「そうじゃ。 

人はな、死ぬまでにプラマイゼロになるんじゃ」

ますます分からん「なに? それ」

 

「+ - = 0 

やった分だけ返ってくるということ。 

良い事をすると、良い事が返ってくる。 

悪い事をすると、悪い事が、な。 

だから、老後の安泰を願うなら、

今の内、人の手助けをしとかんとな」

 

「でも、母ちゃんは年寄りの世話ばかりしてるじゃん。 ありがとうって言う人たちは

み~んな先に死んじゃって、

母ちゃんの番になっても、誰もお返し出来ないよ」

 

「だから年金なんじゃ。 

神様の手帳にチャ~ンと母ちゃんの記録があってな、

いよいよ母ちゃんの番がきたら、

いろんな人や物を使って、

あの手この手で返してくれるんよ」

 

「ふ~ん」

 

「ちなみに・・・」と言いながら、

ツネミは化粧台の引き出しから、

小さなノートを取り出して来た。 

表紙には「タカシ」と書いてある。

 

「ボクの? ノート?」いぶかしげに見るタカシ。

ツネミは開きながら読み上げた。

「あんたは、忘れっぽいからね。 

ちゃんとお返しできるように、書いといてやったよ。

五月五日のマジンガーゼット。 並寿司。 

クリームパフェ。お弁当36回分。傘届け24回。 

手縫い雑巾三枚かける五学年は・・・・・・

タカシに出世払いは期待出来そうもないからなぁ、

ここはひとつ先払いということで

六十歳から月々・・・・・・」

 

 

おちゃらか おちゃらか おちゃらかほい

おちゃらか 有償の愛? おちゃらかほい