歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

視線

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マヤさんは、ふと目を開けた瞬間、

突き刺さるような視線に合いました。

 

電車はすごく混んでいて、斜め前の方には、

荷物を持ったお婆さんが立っています。

 

ハッとして 座席の後ろを見ると、

なんとシルバーシート

 

あまりに疲れていたので、確かめもせず座り、

そのまま寝てしまったのでした。

 

それにしても、周りはなんて冷たい視線でしょう。

どっちにしろ次は降りる駅なので、

マヤさんは一計を案じました。

 

電車が停まり、席を立ち上がると同時に 

びっこをひきだしたのです。

 

背後からは「あ~」という、小さな声が聞こえました。

なるほど、それで、

シルバーシートに座っていたのね・・・・。

 

今は哀れみに変わった視線を受けながら、

マヤさんは、そのままヒョコヒョコと

駅の階段を降りていきました。

 

 

わたしも、目を開けたとたんに

怒鳴られた経験があります。

 

ガラガラの電車に始発から乗って、

熟睡してしまった時のことです。

 

なんでも、そのおじさんは 

わたしがちょっと側へ寄ってくれると、

連れと一緒に座れるのに、気の利かないヤツだ! 

と、ずっと思っていたらしいのです。

 

そんなこと言われたって、知るか!

 

なんで、そう 人を悪く思うのかな。  

一言かければすむことなのに。

 

マヤさんだって、普段はとても優しい娘なの、

わたし 知ってるもん。

 

 

 

これは私の理想論かもしれませんが、

あえてシルバーシートを設ける必要はない

と思います。 

すべての座席はシルバーシートです。

 

山谷で過酷な肉体労働をしている人が

「二人分のシートが空いたときにしか座らない」

と聞いたことがあります。

「汗臭いので、周りの人の迷惑になるから」

というのが理由です。

 

お年寄り、妊産婦、怪我や病気の人はもちろんですが、

自分より明らかに疲れ切って見える人にも

席を譲ってあげる。

どうすれば、譲る人がわかる? 

気軽に声掛けたらいいじゃない。

「席、代わってあげましょうか?」って。