歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

金さん 銀さん

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母と叔母との思い出話

 

久しぶりに 母を連れ出してあげようと 電話をした。

応対に出た姉に 

「お母ちゃん どこか 行きたいとこあるか聞いて」

と言うと、電話の向こうで 母が

「わたしは 無いけど、 

たまは どこか 行きたいのかねぇ」ときた。 

87歳にもなって まだ 

子どもに付き合ってやるつもりでいるらしい(笑)

 

ついでに 隣に住む 84歳の母の妹も 誘った。

バックシートに乗り込んだ白髪の二人は 

さしずめ金さん 銀さん。

銀さんが 金さんに言った。

「整形外科 行ったって? 

なんで 一緒に乗せてってくれなかったの? 

ほんと 薄情なんだから」

よほど 根に持っていたのか いきなりの なじり。

「だって、 あなたが行きたいなんて 

分からなかったもの 」と金さん。

「そしたら 一言 声掛けてみればいいでしょ! 

行くに決まってるじゃない!」

と言われても、 母だって姉の車で通院している身、 

自由がきくわけじゃない。

それっきり 二人は むっつり・・・・・・

険悪ムード漂う車内。

 

外を出歩くには 風が強くて 寒い。  

映画も つまらん。  

となると、 カラオケ行きまっかぁ!

三人で 鳥取砂丘なんぞを 大合唱してるうちに 

氷河も融けてきた。

 

銀さんには キーコントロールがいらない。 

曲の途中でも何でも 勝手に音程を上げ下げする。

それがまた 朗々と歌い上げるもんだから、 

あたしゃ てっきり新曲かと思ったよ。

夕食を摂る頃には すっかり機嫌も直って、 

銀さんの別れ際の言葉は 

「次は 私が おごるよ」

 

淋しいんだよね。 だから かまってもらいたい。 

声掛けてもらいたい。 それは わかる。

でもね、 みんな 忙しいから、 

自分でちゃんと言わなきゃ。 お願いしなきゃ。

いじけてたら かえって人を 遠ざけてしまう。  

世話を受けるのは 当たり前じゃない。

遠慮はしなくていいけど、 

感謝は忘れないようにしなきゃね。