ただ照らすだけ

ケイコは　内観の指導を受けて　始めてみたものの　

なかなか　うまくいきませんでした。

内観の課題は　

「心の自立　依頼心からの脱却」でしたが、　

何かにつけて　人をあてにしてきた場面が　

次々と浮かんできて　気が咎めるのです。

そんなある日、　

アメリカの管制官の話を聞く機会がありました。

例え　一管制官のミスで　

航空機事故が起こったとしても、　

公共の利益　――　この場合は　

二度と同じような事故を起こさないために　　

すべてを　ありのままに報告することによって　

その管制官の罪は一切問わない　というのです。

「そうだ、内観というのは　

　ただ自分を観るだけなんだ。　

　心の隅々まで光を当てることなんだ。

　そうして、　照らし出された自分の姿を見て　

　今まで　無意識でやってきたことにも　

　気づくことなんだ」

そのことを　指導者の方に話すと

「そうですね。　内観って　よく　反省ばかりとか　

　自分を責める方向にいきやすいんですが

　ただ　自分の中の感情とか　

　思いを観ることなんですよね。

　責めるのではなく　

　そういう自分がいたんだ　でいいんです」　

と言われ、　それ以来　ケイコは　

すっと　楽に　座れるようになりました。