おっとり空手
モトミさんは、おっとりした性格です。
その性格で、空手をやってるのが、
お友だちのサカエさんには不思議でした。
モトミさんのアパートの隣人が、
ベランダで犬を飼っています。
ずっとそこでクンクン泣いているので、
モトミさんは可哀想に思って、
隣人の留守に散歩に連れ出しました。
それ以来、その犬は モトミさんを見かけると
さかんに尻尾を振って「連れてって~」と、
催促するようになったそうです。
「この間、
そいつが散歩の途中に逃げ出しちゃってさ~」
と、モトミさんはサカエさんに言いました。
「え?! 大変じゃん!
だって、隣の人は 知らないんでしょう?」
「うん。 だけどね、
駆けてった先は ご主人様の所だったの」
「そうなんだ。 で? おとがめ無し?」
「隣の人は知ってたみたい。
逆にお礼言われちゃった」
情け心で、断りもなく連れ出し、
事が起こってもサラリと言ってのける度胸。
モトミさんの「おっとり」と「空手」が、
リンクしたような出来事でした。