歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

丸裸になっても残るもの

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トミオは よく当たるという 

中国人占い師の所へ行った。

 

大勢の客で だいぶ待たされたが 

占いを終えて帰っていく人々の 明るい表情に

希望で 胸が高まった。 

 

どの人に聞いても「すごい!」だの

「ビンゴ!問題解決!」だのと返事があった。

 

いよいよ順番が訪れて 

占い師の前に座ったトミオは 勢い込んで尋ねた

 

「私の将来はどうなるのでしょう。 

近々昇進はあるのでしょうか。 

買った株で大もうけできますか?」

 

そして ついでに 付け足すように聞いた。 

「生きる意味ってなんでしょう?」

 

占い師は トミオの顔を一瞥すると 

すっと左手を差し出して言った。 

 

「五千円」

「え? 後払いじゃないんですか?」

「あんたの場合は 先に いただくあるね」

 

なんで 俺だけ?  

トミオは いぶかしく思いつつも お金を差し出した。

「それで ―― 」と 前のめりになる トミオを 

右手で制して 占い師は言った。

 

「あんた もうすぐ 死ぬ あるよ」

 

トミオの瞳孔は 開いたままだった。  

占い師の言葉は続いた。

 

「ん・・・と これが 将来っしょ。 

それから 次の質問は?  

あ そうそう 昇進 あるよ。  

いきなり 課長! ―― の予定。 

それと 株ね。 うん 上がる上がる。 大上がり。

それから 最後の 質問は と 

ちょっと あんた 聞いてる あるか?」

 

トミオは ふらふらと 立ち上がった。 

「もうすぐ 死ぬ・・・・・この 俺が・・・・・」

 

もう どうでも よかった。  

昇進がなんだ。 金持ちになって何になる。

追い求めてきたすべてが 

死神によって 引っ剥がされるというのに ―― 。

 

放心状態で帰って行くトミオの 後ろで 

占い師は最後の質問の答えを言った。

 

「丸裸になっても 残るものは 何か。 

それを知るのが 生きる意味 あるよ」

 

おちゃらか おちゃらか おちゃらかほい♪