先生
家庭科のヌイ先生は、とてもおとなしい人です。
それをいいことに、子どもたちはいつも騒いでいます。
「みんな、自分の定規を持って立ちなさい」
ある日 突然、先生がそう言うので、子どもたちは
「なんだろう?」と思いながら立ち上がりました。
「みんながいつも騒がしいのは、先生の責任です。
ですから、今日は、みんなで先生を叩きなさい」
冗談でしょう?
というふうに、子どもたちはニヤニヤしていました。
でも、先生は真剣でした。
「もっと、しっかり叩きなさい!」
本気で叩くまで、許してくれませんでした。
先生の細い手が、しだいに赤く
みみず腫れになってきました。
みんな えんえん泣き出しました。
今そういうことやると、職員会議ものかもしれませんね。
でも、私たちの時代では、
子どもたちを 二度と戦争へ送るまい という思いから、
教育に対して 並々ならぬ
覚悟と 矜持が 先生方の中にあったような気がします。