歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

それでもクラスメートか?!

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「三年二組、白井勝子先生!」

わあー!!

担任発表の日、 

三年二組の列に並んだ子どもたちから 

大きな歓声が上がりました。

勝子先生だ! わ~い わ~い!  

と、嬉しくて仕方がない様子です。

 

でも、一人だけ、 

百合子は 心配そうな顔をしていました。

「勝子先生は、怒りんぼーで 

 とーっても恐いんだぞ」 

と、別の子に言われていたからです。

 

その心配が、現実となりました。

喧嘩した勢いで プラスチックの ちり取りを 

壊してしまった耕次が、 

こっぴどく叱られたのです。

 

「怒ったからって、

 なんで ちり取りに『あたる』わけ!?  

 はよ、直せ! 直すまで 帰さん!」

 

他のみんなは その間 

漢字の書き取りをしていました。

先生を見るのは 恐いし、 

かといって 耕次を見るのも 気の毒だし・・・。

 

耕次は のりを持ってきて引っ付けようとしたり、 

セロテープを使おうかと

あれこれ考えたりしています。

 

うつむいて ただ ひたすら書き取りをしていると、 

突然、 先生が怒鳴りました。

「あ~んたたちは、それでもクラスメートか!? 

 友だちが 怒られて 目の前で困っているのに、

 知らんふりするのか!?」

え? だって、 先生が、 

書き取りしなさいって言ったんじゃ―― 

百合子は とまどいました。

 

ぞろぞろ ぞろぞろ みんなが席を立って行きます。

そして、 耕次を囲んで 

あーでもない こーでもない と、 

直す方法を探っています。

その間、 腕を組んで 

ぷんぷんしていた勝子先生は、 

まんざらでもないような顔をしています。

 

わいわいがやがや しまいには 先生も加わって 

「修理」しながら、笑顔も出てきました。

 

百合子は みんなの顔を そっと見ながら、 

勝子先生が好かれる理由が 

なんとなく分かる気がしました。