敬語を使うかどうかが問題なのではない。
どういう気持ちで使うかが大切なんだ。
臨時の若い女の先生が、
階段を下りていくベテランの男性教諭の後ろ姿に
親しく話しかけた。
教諭は振り向きざま
「私はあなたのことを認めていませんからね」
と言い放って、すたすた先に行った。
若い先生は何が何だかわからず、ただ凍り付いた。
職員室へ戻って、同僚に話すと、
どうやら タメ口 が原因らしい。
若い先生は
「これから、気をつけます」と謝るしかなかった。
若い先生のクラスは、とても明るかった。
二年生の子どもたちは先生の側に居たがった。
掃除をするたび、
教壇が黒板に近づくので不思議に思っていると、
子どもたちが、どんどん机を
先生の方へ寄せて並べているのがわかった。
学校そのものに厳しい批判の目を向ける親や、
男性教諭のような人もいたけれど、
ほとんどの親や同僚と
若い先生はすぐにうち解けて仲良くなった。
男性教諭の方はと言えば、職員室で孤立し、
教室は冷え切っていた。