歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

いじめ

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三年一組担任のサエコ先生は、 

子どもたちが 次々と泣き出すので、 

びっくりしました。  

五人目の子の手元を見ると、 

何やら紙切れを持っています。

 

「それ、 先生によこしなさい」 

と言って取り上げました。

その紙には、 ウンコの絵と

「むかつく!」の文字が ありました。 

そして、 ご丁寧に「給食を食べる前に見れ!」

とただし書きまで添えてあります。

 

「これ書いたの誰?! 出てきなさい! 

 こんな事して、いいと思ってんの? 

 これ見た人が、嫌な気持ちになるのが 

 わからないの?」

 

サエコ先生は、 紙を掲げて言いました。 

 

ミチは、 みんなに見せるつもりで 

これを書いたのではありませんでした。

カツヤが ミチのことをバカにしたので、 

カツヤに仕返ししてやろうとしたのです。

でも、 どういう訳か 

全然関係ないクラスメートに渡ってしまいました。

しかも、次から次に――。

 

「これも、いじめです。  

 先生は、いじめを絶対に許しません!」

 

いつも 生徒と楽しく遊んでくれる 

サエコ先生が 本気で 怒っているのを見て、

子どもたちに 緊張が走りました。

 

「ミチ、 手 挙げた方がいいよ」

ミチの親友の カナエがそっと言いました。

ミチも 大好きな先生を 

これ以上怒らせたくはありません。

それに、 サエコ先生なら 

ミチの言い分も きっと 聞いてくれるでしょう。

 

ミチは こわごわ 手を挙げました。

それを見て、 サエコ先生は よし! 

という顔をしました。  

「こっち来なさい!」

 

先生に呼ばれて 席を立ったミチに、 

パチパチ と小さな拍手が起きました。

 

いい気味 というのではありません。

 

悪い事は 悪いのだけれど、 

正直に名乗りを上げた ミチは えらいなぁ 

という みんなの気持ちからでした。