0から100
ヨシエちゃんは、引っ込み思案の中学一年生です。
「このままでは、学校で
いじめられてしまうんじゃないかしら」
心配したお母さんは、ヨシエちゃんを
知り合いの空手道場に通わせることにしました。
何回か遊びに行った折に、ヨシエちゃんが
興味深そうに窓から覗いていたからです。
普段はおとなしいヨシエちゃんでしたが、
やはり空手は好きと見えて、エイ! ヤア!
と、元気に形の稽古に励んでいます。
ところが、一つの形をするにも、
ハアハア荒い息をして、疲れ切ってしまうのです。
技にも切れがありません。
空手の先生は、ヨシエちゃんが
いつも緊張しているのを見て言いました。
「ヨシエちゃん。
力を入れるところと、抜くところを知るんだ。
技を決めるときは100%の力を出し切る。
しかし、次の技をかけるまでは0%。
リラックスして、動きやすい状態にしておくんだ。
猫を見てごらん。
のんべんだらりとしているけれど、
いざという時、すごい速さで動くだろう?
0から100。 0から100でいきなさい」