図書館
ヤスシには 思い出があった。
受験生の頃、憧れの君を 図書館で見かけることを
願いながら 勉強したことだった。
朝早く出かけて、夕方遅くまで 待っていた。
やっと、彼女が現れた時、ヤスシの胸は高鳴った。
つかず離れず、目線に収まるように席を取りながら、
ヤスシはもうそれだけで、じゅうぶん幸せだった。
ああ この ひと時が 永遠に続きますように・・・
ほんわか空気も桜色に――
「へぇ~っくしょい!」
突然、デカイくしゃみの音がして、その後、
ズズズズズーーーと鼻をすする音。
図書館の空気は、いっぺんに鼻水色になった。
誰かと見れば、三組のヨシヤ。
鼻を垂らしながらも、目を皿のようにして
一心に問題集を解く姿に、誰も何も言えない。
へぇ~・・へぇ~・・へぇ~・・
(はーっやく、出すなら出せ!)
ズズズ~・・ズズ・ズ・・ゴクン
(飲んだんかい!?)
いたたまれなくなって とうとう
憧れの君は 席を立った。
あ~、行かないで~!
ヨシヤはその後、みごと大学に合格し、医者になった。
せっかくの清き思い出を、
グシュグシュにされたヤスシは、
ヨシヤの病院には絶対に行かんぞ! と決めている。
おちゃらか おちゃらか おちゃらかほい
水色は~涙色~♪ ほ~い~のほい♪