歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

シェイクスピア

ものぐさタローの 携帯販売が なかなか好調だ。

なんでだろう? と 不思議に思って 

気弱なヤスシが訪ねた。

 

ちょうどショップで接客中だったタローであったが 

案の定 客を前にしても ろくにしゃべらない。 

 

だいぶ経った頃 タローが何か ちょこっと言うと 

客は さも感心したように 

「へぇ~!」と うなずいて 

そんじゃあ 買っちゃおうかな となった。

 

客が帰った後 ヤスシはタローに 

「いったい 何を言ったの?」と 聞いてみた。

 

タローは 事も無げに

シェークスピアだよ」と 言う。 

シェイクスピア!?」

 

「店長が もっと 説明しろ 売り込め 

 ってうるさいけど 

 しゃべるのはめんどくさいから 

 客に好きなだけ選ばせ しゃべらせてから 

 客の好みそうなことを 一言 言うんだ」 

 

「たとえば?」と 興味津々のヤスシ。

「たとえば 緑色をまとった女性は美しい とか。 

 その日の決断は 一生の得 とか」と タロー。 

 

「それ 誰が言ったの?」 「シェイクスピア

「え? ほんとに?」 「ほんとは 俺」 

「それって うそ じゃん」

 

「うそでも みんな へぇ~って 言うよ。 

 たまに シェイクスピアって誰? 

 って聞くヤツもいるけど。 

 そんときゃ イギリスの超有名な作家 

 と答えると そのあと また へぇ~!」

 

いくら ものぐさでも 自分がダシにしている

作家の出所くらいは 調べたと見える。

 

ま これくらいの うそなら 

勘違いで すませられるのかもしれない と 

ヤスシが思っていると

 

「でも この頃 ちょっと 困ったことがあるんだ」

と タロー。

「どうしたの?」   

この前な と タローは 話し始めた。

 

「俺のものは お前のもの 

 お前のものは 俺のもの」と 

 インテリな友だちに言ったら 

「お? シェイクスピアときたか! 

 そんじゃ~ 俺も 

『金を貸すと 金も友も失う』で どうだ!」と 

応酬してきた。 

 

テキトーに 言った言葉なのに・・・・・・。 

そんとき タローは 思った。 

もしかして 俺 シェイクスピアの 

生まれ変わりなんじゃないか ―― 。   

こんなとこで 携帯売ってる場合か?

 

おちゃらか おちゃらか おちゃらかほい♪

だまされてるのは どっちよ の・ほい♪