席取り
バス停物語その2
席取り名人の ばあちゃんが 乗り込んでくる
という バス停もあった。
薄汚れた巾着袋を持ち、色あせた
抹茶色の頬被りをした 背の高いばあちゃんだ。
ばあちゃんは、どんなに混んでいても、必ず座る!
その秘訣はこうだ。
まず、バスに乗り込むと、車内をサッと見渡す。
空いている席が在ればもちろんそこに行くが、
なければクルリと後ろ向きになる。
そうして、そろりそろり、でっかい尻を
ムクムク動かしながら、目指す席に向かうのだ。
次第に近づいてくる 不気味な
草履のズリズリする音に、
人のことなどお構いなしに
新聞読んでたサラリーマンは畳み、
ヤクザな兄ちゃんの広げた股も行儀良く閉じる。
おちゃらか おちゃらか おちゃらかほい
振り向いたら負けよ おちゃらかほい!