歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

外食日

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コロナ前のお話です。

 

「斉藤さ~ん。 美味しかったですか~?」  

にこにこと 大満足の お年寄りの間を 

リーダーの クニさんを先頭に 

ヘルパーさんたちの 明るい声が 飛び交います。

 

今日は 認知症老人グループホーム 

「愛会園」の 月に一度の外食日。

 

食後のテーブルや 床は 

食べかすや 汁物が 散乱しています。

それ! と ばかりに 

園から持ってきた 雑巾やふきんで拭き取り、 

持ち帰り用のゴミ袋に入れ、 

他のお客さんの迷惑にならないように 

さっさと片づけます。

 

「お世話様でした」と 店の人に会釈すると、 

「ありがとうございました。

 ぜひ また ご利用ください 」 

と 心のこもった言葉が返ってきます。

 

以前は レストランの予約に かなり難航しました。

店側にすれば 認知症老人の団体と聞いて 

尻込みし 断る所が多かったのです。

 

クニさんは 熱心に 受け入れ先を探し説得しました。

園内に閉じこもりがちなお年寄りにも 

外食の楽しみを 味わってもらいたいからです。

 

レストランが決まると 事前に 

メニューを貰ってきて 皆に選ばせ 書き取りました。

今言ったことを 

すぐにも忘れてしまう お年寄りの事

むろん 当日になって 

自分が何を注文したかなんて 覚えていません。

それでも 皆でわいわい メニューを選ぶ時の 

あの 瞳の輝きようったら!

そして いよいよ その日になると 

おしゃれをして そわそわと出かけるのです。

 

時間帯は 一般のお客さんとは 

若干ずらして 予約を入れます。

店側は 事前注文を受けているので 

迅速に食卓を整える事ができます。

食事を運んで貰う以外のサービスは 

すべて 自分たちでやります。

 

そして 来店時と変わりなく むしろそれ以上に 

床もピッカピカにして 帰ります。

かくして み~んな ハッピィ♪ な 気分で

「また どうぞ」と なるんです。