歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

手動ワイパー

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ヤスシは 教会に通って 

ボランティア活動に精を出している。

今日も、気の毒な「片付けられない人」のために、

出動するという。

 

「え?あたし?あたしゃ、いいよ。遠慮しとくよ」と、

貴いお仕事を たまは ご辞退申し上げたけれど、

「どうしても 君が必要なんだ」な~んて言われて

しぶしぶ引き受けた。

 

営団地の三階。 住人は体調を崩して入院中。

ドアを開けると、異様な臭い。 

「へ! ここ、人 住んでんの?」

ゴミか家具か分からない状態で、

まさに足の踏み場もない。 

台所や冷蔵庫には 腐った食べ物が散乱している。

 

「ほら、洗剤をあれこれ買ってあるでしょう? 

掃除する気はあったんだよね」

と、あくまで優しいボーイ。

「する気があるなら はよ せー!」と、

鼻を覆うものを探すたま。

 

「まずは、一部屋きれいにしよう」

ヤスシの指示で、比較的隙間のありそうな部屋の物を 

片っ端から出す。

ほかの部屋に詰めようが どうしようが構わない。 

とにかく出す。出す。出す。

そうして スッカラカンになった部屋を 

きれいに掃いて 拭く。

とりあえず 一息つけるスペースがあると、

人間 落ち着くそうだ。

 

「これで、よし! あとは、ゴミを捨てるだけ」

捨てる「だけ」なんて、軽く言うなよ! 

なんじゃ、こりゃ!

三階を何往復したことだろう。 

軽トラックに積み上げた頃には 

もう くたくた。

 

「なじみの」ゴミ捨て場に行くと、

まず トラックごと量りに乗り 重さを出す。

そして、ゴミを捨てた後に 今度は 

トラックだけ乗っけて ゴミの量を算定する。

 

「五千円ですんだよ。安いね~」と、

どこまで めでたいんだ この男は――。

 

やれやれ、やっと帰れると思いきや、

雨が降ってきた。

「やっぱり、きたか・・・」というヤスシの言葉に、

たまは なにやら不吉なものを感じた。

雨のドライブ パート2である。

 

「誰も使わなくなった」軽トラックを

借りることができたんだ とヤツが言った時、

気づくべきだった。

 

ヤスシは 運転席側のワイパーに、

ヒモを結びつけた。

それを窓から中へ入れ、

助手席に座る たまに 手渡した。

「これ、ボクの後ろから引っ張って」     

 うっそだろ~!  

 

降りしきる雨の中を、たまは 引っ張った。

ヒモは何度もほどけて、

そのたんびに降りて また 結ぶ。

引っ張る。 はずれる。 結ぶ。 

引っ張る。 はずれる。 結ぶ。

もう ずぶぬれ。ぐちゃぐちゃ。こんちくしょー!

君が必要・・・って、これかよー!!!!

 

 

 

おちゃらか おちゃらか おちゃらかほい

あんたを片付けたい おちゃらかぽいっ!

 

 

おちゃらかほい!の「たま」とブログ作者とは、

関係ありません。

・・・・・・いや、ちょっとだけ あります。