歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

学ばない人

f:id:tamacafe:20210304145529j:plain

絵の品評会へ出かけた。

カルチャーセンター水彩画教室の

生徒さん達による作品が、

ズラっと並んだイーゼルに立てかけられていた。

その中に、エーゲ海を描いた 

場違いな感じの絵があった。

あれ? 変だな。 今日は確か、

教室で学んだ期間の絵のはずだが・・・・・・。

 

作品は、プロの油絵画家のものだった。

「油絵で行き詰まって、水彩画に興味を持った」 

という自己紹介をしていた人だ。

その割には、

「ネットで調べたら、絵、随分お高いんですねぇ」

と、他の生徒から持ち上げられて 

どこそこで展示会をやるだの、

20年以上絵筆一本で食っているだのと

自慢げだった。

 

「え~、この絵は、いつも油絵で描いている

私の代表的な風景画を、去年、

たまたま水彩で描いたものです」と説明すると、

「わ~、すご~い! さすが、プロね~」 

の声があちこちで上がったが、講師は軽くいなした。

そして、彼の絵の感想には触れず、

一般論として、頭の中だけで でっち上げた、

独りよがりの絵が多いと言ってのけた。

 

その教室では、自然や街中に出かけて、

暑い日も寒い日も立ちつくし、

実際の風景を その場で描きとる

スケッチを推奨していたのだ。

 

「画家が、 かつての栄光の上で 

あぐらをかいている間、 売れ筋を見て 

美しく飾った絵は、ほとんど顧みられなくなった。  

自分の目と感性を信じて、こつこつ苦労して、 

日常風景を描く。 納得するまで通い、 

そこの空気を読む。  普通の人が描く 

生活感溢れる絵の時代がやってきたんです」

 

独学で、今をときめく売れっ子画家となった 

カルチャー講師の自信がのぞく。

嗜好品だから、どれがどうとは言えない。 

その油絵画家の絵も、年に数点は売れて、

それだけで、「普通の人」の生活費を

はるかに凌ぐのかも知れない。

 

でも、さ。 せっかく他の人んとこへ

わざわざ金払って習いにきたのなら、

その期間は 言われた事をせっせとやって、

もっと素直に お勉強したほうが、

得だと思うけどなぁ。