歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

痴漢対策

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ノブコが 部活を終えて、

日の暮れた道を帰って行った時のことだ。

坂道に差しかかった所で、道ばたの植え込みから、

突然 男が飛び出した。

 

そいつは、驚いて立ちすくむノブコの両足を、

足首からスッとさすって逃げてった。

丸刈りで学生服。ノブコと同じ中学生くらいで、

ほんの好奇心からやってのけたのだろう。

 

とはいえ、その日以来、

ノブコは帰路が恐ろしくなった。 そうして、

あれこれと痴漢対策を練るようになっていた。

 

いつもながら遅い部活の帰り道、

その時」はやってきた。

狭い一本の路地、暗がりの向こうに 男が現れた。

 

あれこれと考えが巡りだした。

大声で叫ぼうか――でも、

まだ 痴漢と決まった訳じゃない。

石を拾ってぶつけようか――

拾う間に襲われたらどうしよう。

蹴り入れたろか――ああ、あいつ、

この前の奴よりデカイやん。 大人じゃん!

 

そうこうしてるうちに 男との距離は 

どんどん縮まってくる。

 

とっさに閃いた! 

 

ノブコは 手足を不気味に ゆらゆら動かして、

時には鞄を大きく振りながら、

奇声を発して自ら男に向かって行ったのだ。

 

ひゃらららら~。 あばばばぶ~。 

うひゃひゃひゃひゃ~。 うっげー!

 

おしっこはチビリそうになるし、

ヨダレまで垂れてきた。 演劇部の本領発揮!

 

そぞろ歩きをしていた男は、

ただならぬ気配を感じ、壁際に張り付いた。

 

すれ違いざまに見た男の顔を、

ノブコは生涯忘れないだろう。

 

恐怖に引きつって大きく開かれた目、

ずれたメガネ、震える唇。

声が出せたら言ったに違いない

 

わたしを襲わないで!

 

 

 

おちゃらか おちゃらか おちゃらかほい

ほんまの話や おちゃらかほい!

 

 

そう言えば、ジャズ・シンガー綾戸智絵さんも、

同じような体験話してはったな~。