歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

樹木希林さん

私が今日まで生きてきて、

自分で一番トクしたなと思うのはね、

言葉で言うと、不器量と言うか、

不細工だったことなんですよ。

 

私は、普通だと思ってるんだけども、

他人(ひと)がそういうふうに見るから、

ああ、そうなんだなあと思って見ているうちに、

器量よしばっかり集まる芸能界に

入っちゃったんですよ(笑)。

 

今でこそ、役の広がりが出てきましたけど、

昔はお手伝いさんまでも、

器量よしがやったわけですからね(笑)。

ま、だから、自分が不器量だということに

早目に気がつかされちゃってね。

 

それでね、案外自分としては、

男を見誤らないできたという確信があるんですよ。

要するに、見誤らないというのは、

自分がこうだと思ったとおりなんです。

それを選ぶか選ばないかは、自分の縁ですからね。

だから、不器量であるために、

他人が私に関心を寄せないから、

こっちが自由に人を判断できる。

 

今日まで、いろんな男の人との出会いがあって、

中には、うーん、

ねえっていうのもありますけれど(笑)、

それも含めて納得しているんですね。

不器量のトクな点だなあと。

 

一切なりゆき~樹木希林のことば~  文藝春秋より

 

樹木希林さんが 老舗の和菓子屋さんを訪れる番組で 

お得意様に配達に行くという店主のライトバン

「私 運転しましょうか?」なんて

気軽に真顔で話すのを見て ああ この人は 

どんなに有名になっても

庶民感覚を失わない人なんだなぁと感心しました。

 

その次に訪れた着物屋さんでは 

樹木希林さんのファンだという女主人が

プレゼントした半纏を

「いらない」と言って受け取りませんでした。

「わざわざ あなたのために作ったのよ」と

不満顔で何とか持ち帰ってもらおうとするのですが

頑として

「いらないものは いらない」というのです。

 

お顔も 性格も 振舞いも 

ほんとに 面白い 味わい深い方でした。