歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

八千草薫さん

私は、幼い頃の数年間を祖父母の元で暮らしました。

その頃、祖母は、母親とはまた違った

祖母なりのしつけをしてくれました。

その中でとても印象に残っていることがあります。

 

それは、眠る前のお祈りでした。

必ず眠りに入る前に、

手を合わせて神様に挨拶をしてから寝なさいと、

教えられたのです。

 

幼い私にとって、神様と聞いて思い浮かんだのは、

若くして亡くなった父でした。

それで毎晩、今日あった出来事の反省や

失敗したと思うことなどを父に話しかけて、

最後は手を合わせて「おやすみなさい」と

挨拶するのを習慣にしていました。

 

小さな子どものことですから、

面倒な日や眠くてたまらないときなどは、

申し訳程度に

手を合わせただけだったこともありました。

 

でも、その日一日あった辛いことや、

悲しい出来事などを父に報告する

この習慣があったおかげで、

嫌な感情を帳消しにして翌日まで

持ち越さないようにすることができたのです。

 

それと同時に、いつも神様が見ているから、

悪いことをしてはいけないし、

噓もついてはいけない。

毎夜手を合わせていると、

そんな思いも自ずと芽生えてきました。

 

祖母はきっと、子どもの私に、

そのことを教えたかったのではないでしょうか。

 

今ではほとんど聞くことがなくなりましたが、

かつては「お天道様が見ているから、

恥ずかしいことはできない」

という言葉をよく使いました。

 

いつもどこかでお天道様が見ていてくれる――。

そのことに感謝して時折手を合わせてみる。

そうした感覚を忘れなければ、

品位や品格というものも

自ずと保たれるのではないか、

という気がいたします。

 

「あなただけの、咲き方で」八千草薫著 幻冬舎より

 

 

八千草薫さんの あの優しく上品な佇まいは 

この様な習慣にもよるのですね。