誰をも恨まじ
カネさんの愚痴は 絶えることがありません。
気の利かない嫁に始まって、
ちっとも訪ねてこない子どもたちのこと、
自分のうわさ話をしている?近所の人たち、
終いには 亡くなった旦那さんの悪口になりました。
付き始めた時は 根気よく話を聞いていた
ヘルパーのサトコさんも、
だんだんうんざりしてきて いい加減にしてよ!
と 言いたくなりました。
仕事じゃなけりゃ やっぱり来なくなったでしょう。
一人ぼっちで 淋しいのは わかります。
でも、 来なくなった人たちにも
言い分があるはずです。
もし、 自分のまわりに人が寄りつかなくなったら、
それは 自分の不徳の致すところと心得て
誰をも恨まじ
―― そう思う サトコさんでした。