歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

怒る人

f:id:tamacafe:20210302155031j:plain

 

「せやからな、

車をギュ~ンとバスの前に回したってん」

「そいで、バスを停めて 怒鳴ったわけ?!」

「わいかて、普段はそんなこと せーへんで。 

ここはド田舎やろ?

そのバス行ってもうたら、

あと四時間待たなあかんのや」

 

シュウとの会話。 

雪深い田舎のバス停。 

停留所から少し離れたところの待合所で、

お婆さんが一人、だいぶ前から待っていた。 

やっとバスが来たものの、

お婆さんがよっこらしょっと腰をあげ、

もっそりもっそり歩いてくるのを待ちかねて、

バスが発車してしまったというのだ。

 

たまたまそれを見たシュウは、

お婆さんを自分の車に乗せると、バスを追っかけ、

追いついて停め

「なんで、そんな不人情な事すんのや!」と、

運転手を叱ったというのである。

 

ガソリンスタンドでの出来事。

ガソリンを入れてもらっている間、

おっちゃん店員の横柄な態度を目にする。

「ここじゃ、ここ回れ、ここ!」

いくつかあるスタンドの一つに停めようとした車を、

自分の立っている方に回れと指図しているのだ。

シュウの一言。 「うちら 客やで!」

 

クリーニング店にて。

店先と、駐車場入り口とにかかる場所に 

デカイ外車が停めてある。

店に入ったシュウが、車の主に

「あんな所に停めたら、店にも、

駐車場にも入りづらいじゃないですか」と言うと、

店の人が気を使って「すみません」と言う。

「あなたが謝ることはない」とシュウ。

「すぐ、出るから」と車の主。 

「そういう問題じゃない、

人のこと考えて停めてと言ってるんです」

「はいはい。 すんませんねぇ」

 

「ったく、わしゃ謝ってほしくて

言ってるわけやないのに

――自分勝手なヤツ多いなぁ」

シュウは言いたいことを言う。 怒る時には怒る。 

そして後腐れ無くさっぱりしている。

「怒る」というのに関して、

私はどこか後ろめたさを感じている。 

柔和な人、穏和な人と思われたい。 

それでいて、不愉快な出来事に遭遇すると、

誰かが言ってくれないかなと願うずるさがある。