歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

猫タマ

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もともとタマは、

タカシんちに出入りしていた野良猫だ。

引っ越してきたばかりで、まだ 

友だちのいない 子どもたちが 淋しかろうと、

タカシの母ちゃんのツネミが「タマ」と名付けて 

時々 餌をやっていたのだ。

 

ある日、「タマ~、タマ~」と呼ぶと

隣から「ふぁ~」という声が返ってきた。

いつもの「にゃ~」とは違うな と 

いぶかりつつも、また「タマ~」と呼んでみた。

「は~い」今度は、人間の声。

 

ツネミは知らなかった。 

隣の住人が 

たまたま「たま」であることを・・・・・・。

 

「お隣がふざけて 返事してるのね」と、

ツネミは思った。

たまは たまで 

「昼寝どきに、訪ねてくるヤツは誰や」と、

不機嫌であった。

 

ツネミは、前よりも しっかりした声で

「タマー」と、呼んだ。

たまも 

「返事しとるやろ、聞こえへんかったんか?」

という思いで、はっきりと

「はい」と返した。

 

ふざけるのも、いいかげんにしてよ

「タマー」

 

いつものように、

玄関口まで勝手に入ってきたらよかろうに

「はーい」

 

あんたに用はない! 猫呼んでるのよ

タ・マーーーー!

ツネミはついに 腹立ち紛れの大声を上げた。

ところが その瞬間、天からの啓示か、

隣家の表札にあった「たま」の文字が

稲妻のように脳裏をよぎった!

 

「んじゃ~こりゃ~! さっきから 

はーい つっとるやろがー!! 誰やー!!!

 

たまが 鼻息荒く出てくるのと 間一髪、

ツネミは 連翹(れんぎょう)の影に 隠れた。

 

 

おちゃらか おちゃらか おちゃらかほい

尻が見えとる おちゃらかほい

 

これとは ちょっと話が違うんですが、お隣に荷物を届けに来た人が、

呼びかけた声に たまが勘違いして 

「はーい」と勢い良く出てきたのにびっくりして

思わず生垣の下に隠れてしまったことを、後で打ち明けてくれました。