あいさつ
「おはようございます」 勝った!
ヤスシは胸元で小さくガッツポーズをした。
ほどなくして、別の人がやってくる。
「おはようございます」 あ~! 負けた。
先に言われてしまった。
朝の散歩風景。
行き交う人に挨拶のタイミングがむずかしい。
初めの頃は、うつむいたり
知らんふりしていたけれど、
突然向こうから挨拶されると、うろたえてしまう。
そして、
なんだか自分がちっぽけな人間のような気がしたのだ。
だから、
できるだけ こちらから先手を打つことにした。
それにしても、タイミングだ。
あまり遠くから声を掛けるのも変だし・・・。
海沿いの堤防に差しかかると、
向こう側から女の人がやって来た。
100メートルくらいまでは、海を見ながら歩こう。
50メートルに近づいたら、チラホラ顔をうかがう。
40、30、20・・・それから――
「お」と言いかけた時だった。
幅2メートルにも満たない堤防で、
不審?な男を避けようとして、
女の人がズリっと足を滑らせたのだ。
ヤスシは思わず叫んだ
「おヤバイ!」
おちゃらか おちゃらか おちゃらかほい
どんなあいさつや ほ~いの ほい!