歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

買ったばかりのタオル

f:id:tamacafe:20220301154625j:plain

あなたは聞きたいんじゃない

しゃべりたいだけだ

 

自分のことは よく知っているでしょう?

どんなに 言葉を飾り立てても

それと違う自分も さんざん見てきたでしょう?

 

それなのに どうして いつもいつも

自分のことばかり 言いたがるのかな

 

しっかり耳を傾ければ   

たくさんのことが学べるのに

 

違う世界が   

開けてくるかも知れないのに

 

もったいないと 思わないのかなあ

 

 

ヒロ先生は 緑色のよれよれコートを

いつも羽織っていました。

 

風貌はまるでインディアンのようです。

脂ぎった黒髪が肩のあたりまで垂れています。

 

手入れされてない髭が伸び 

目はギョロっとしています。

 

そのせいで 度々おまわりさんに呼び止められ

職務質問とやらをされます。 

それで 歯科医師免許を携帯するようにしたそうです。

 

不器用で 残念ながら 歯科医師としての腕も 

あまりよくありません。

 

けれど 一生懸命です。

患者さんのニーズに応えようと

精一杯の努力を惜しみません。

 

話し方は朴訥です。

それは 正直であろうとするからです。

 

冗談は好きですが ごまかすことはしません。

わたしの質問に対しても その目をしばたたせて 

真剣に考えるのです。

 

かつては世界を放浪し 

貧しい人々や虐げられた人々の様子を

書き記していました。

 

ヒロ先生の母親も歯科医師でした。

80歳を過ぎても働いていました。

 

昔ながらの 薄暗い診療所で 

煮沸消毒した古い器具を使って 

馴染みの患者さんを診ていました。

 

お母さん先生が亡くなった時 残ったのは 

継ぎの当たった下着と僅かな遺品だけでした。

 

その代わり 届いたのは 

国境を越えた医師団からの感謝状を含む 

沢山のお礼の手紙でした。

 

誰よりも平和を願っていながら 

声を張り上げることもなく ただ ひたすら

自分と周りに誠実に生きた人たちでした。