歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

花道

久しぶりに 子孫が集まってきました。

おじいちゃんはパーキンソンの症状が進み 

ご飯も独りでは食べられなくなっていました。

 

四年生の タカオは

「こんな体でも 長生きしてください」と

手紙を書きました。

 

二年生の ミチノリは ただただ 

おじいちゃんを 心配そうに見ていました。

 

病気のせいで おじいちゃんの顔は 

伏し目がちに固まっているかのように見えました。

 

おばあちゃんに 食べさせて貰いながら 

美味しいのか まずいのかも 

分からないような感じでした。

 

みんなは おじいちゃんのことを 

気に掛けながらも 

せっかくの集いを盛り上げようと 

わいわい がやがや していました。

 

楽しい時間は あっという間に過ぎて 

そろそろ タカオもミチノリも お眠の時間です。

 

その気配を察したのか さっきから 

こっくりこっくりしていた おじいちゃんが 

いきなり起きて ソファーから 

立ち上がろうとしました。

 

おばあちゃんが 駆け寄り 手を取りました。    

そして おじいちゃんを代弁して 言いました。

「はい みなさん。 おやすみなさい」 

それから おじいちゃんをベッドの方へ 

連れて行こうとしました。 

 

「おやすみ~。 おじいちゃん!」

みんなは 立ち上がって 

おじいちゃんの 通る道を空けました。

 

すると おじいちゃんが 

突然 しゃべったのです。    

 

「はなみ・・・」

「え? なに?」 小っさな 声だったので 

みんなは 聞き耳を立てました。 

 

「はなみ・・・」と 

おじいちゃんは くり返しました。

 

「なに? 鼻水?!」と 

トシオおじちゃんが言って 

ティッシュを渡そうとしました。

 

おじいちゃんは グッと 

背筋を伸ばすようにして 今度は 

力を込めて ハッキリ言いました。

 

花道!」   

そして ニタリと笑いました。

みんなは あわてて 

おばあちゃんとおじいちゃんの頭上に 

手をかざしました。

 

 

おちゃらか おちゃらか おちゃらかほい♪

最後は 決まったね! おじいちゃん ほい♪