歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

人懐(なつ)っこい子

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団地に住んでいた時 よく遊びに来る 

人懐っこい子がいました。

私には一年生と三年生の子がいて、

三人で遊んでいました。

 

私は カノコが あまり好きではありませんでした。

勝手に 冷蔵庫を 開けたりもするからです。

 

ある時、子どもたちのいない時間に 

カノコが遊びに来ました。

「二人とも いないよ」と言うと、

「おばちゃんと遊びに来たの」と言うのです。

私はびっくりして、引いてしまいました。

貴重なひとりの時間を 

邪魔されたくないと思いました。

なので「いや、今忙しいからダメ」と、

追い返しました。

 

あれから長い年月が流れ、

私は孫を持つ身となりました。

今にして思うのです。

好奇心の塊のような子どもたちにとって、

冷蔵庫はなんて魅力的な物体でしょう。

その冷蔵庫を

「開けたい」と思わない方が、

どうかしてるんじゃないかって。

 

カノコの両親は カンボジアで 

ボランティア教師をしていたこともあった

と聞きました。

貧しい国で やさしい大らかな両親のもとで 

のびのび育ったカノコにとって

「人んちも自分ち」

そして子どもだろうが大人だろうが 

人がいたら声をかけるのは

当たり前のことだったのかもしれません。

昔はそうでしたね。 家を訪ねていなかったら、

勝手に水屋にあったおやつかなんか食べて

待ってたりもしたもんです。

 

今の私は カノコのことが 

あの人懐っこい笑顔が 恋しく思えます。

もし、カノコがやってきて 

また冷蔵庫をあけようとしたら、言うでしょうね。

「な~にが入っているのかな? 一緒に見てみよう!」

って。

 

 

 

              (文中仮名)