歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

本を貸すこと あげること

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来週は 四か月に一度の ソロで歌うという日 

同じ歌曲クラスの人から 

 

「拙著ですが」と 

詩集を全員にプレゼントされました。

 

手にした時 装丁が美しく 素敵な本ではありましたが 

「え? この タイミングで?」と

思わざるを得ませんでした。 

 

もちろん 皆は 礼儀上 

「ありがとう」や「すごい」だのと言いますが

 

心の内は 来週のソロの事で 

一杯だったのではないかと思います。

 

今日これを頂いたという事は 来週歌う前に 

彼女に何らかの感想を言わねばならず 

そのためには 

読んでいなくてはならないという事です。

 

わたしは いい加減にスルーする事が 難しく 

とにかく目を通しましたが 

正直言って 負担に感じました。

 

詩集ともなると 味わうのに 時間が要ります。

こんなふうに こんなタイミングで 

ザバッと 皆に配るのは 産みの親として 

彼女の詩たちに 失礼な気がしました。

 

翌週本番の日 いつもは 早く行っていたのですが 

大騒ぎに巻き込まれたくなかったので 

発声練習が始まる直前にクラスに行くことにして 

その間 

「Je veux vivre」歌劇ロミオとジュリエットより

「わたしは生きたいの」

フランス語で10ページもある大曲を 

覚えるのに必死でした。 

 

イタリア語は だいぶ慣れてきましたが 

フランス語は 歌いながら 

唾が溜まる感じなんかもあって 四か月かけても 

覚えるにも 歌うにも難しかったのです。

 

いよいよ 時間が来て クラスに向かうと 

案の定 彼女の詩の話で 賑わっていました。 

 

と言っても内容に言及するというより

「素晴らしい!」「わたしにはとても書けないわ~」

「すごい才能ですね」

といった言葉が飛び交っていました。 

 

それに対して彼女は

「いえいえ そんなことないですよ~。

皆さんにも書けますよ~」

みたいなことを言っていました。

 

わたしが入るとすぐに発声練習が始まったので 

会話に加わることは ありませんでした。

 

そして 帰り際 彼女のもとに行き 

本を取り出して まず「装丁が美しいですね。

この本の佇まいが好きです。でも 詩の事は 

あまりよくわかりませんので 

ゆっくり読ませていただきますね」と告げました。

 

ひとつ良かったのは この本が 

プレゼントだったことです。 

 

「貸してあげるから 読んでみて」と言われて 

返す期限と それまでに読まなくちゃならない

というプレッシャーを受けなくてもすみます。

 

わたしも かつては 拙著をよく人にあげていました。

 

図書館にもありましたが 

残り少ない本は貸し出してもいました。

 

「わたしの歯科のバイブルにします」と

言ってくださった看護師さんや 

 

絵本を見て号泣し 

何冊も購入してくださった人もいました。 

 

でも 今は 

 

珈琲を初めて注文してくださった方への

プレゼントのみにしています。

 

これも 何かのご縁ですから ご笑納ください 

との 言葉を添えて。