歌う珈琲屋さん

クラシック歌曲・オーガニック珈琲

意識転換

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ミナコは ものすごく 腹を立てていました。

出戻りの娘が ぐーたらと なにもせず、

亭主も それを ほったらかしで 

自分の好きなことばかり。

 

むかついて飛び出し、 友だちの家へ向かい 

ハンドルを握りました。

「なによ! あいつら! 私のことを 

お手伝いかなんかと思ってんの? 

なんでも かんでも私に押しつけて! 

もういい大人なんだから、 

自分のことは自分でしろってんだよ! くっそー!

いらんわ いらんわ あんな連中! いらん!」

 

その時です、 ふと、 

声が聞こえたような気がしたのは 

―― 「いらんのは お前だ」

 

へ?

 

突然 夫や娘を前にして暴君のように振る舞っている 

自分の姿が映し出されてきました。

ふたりは 圧迫を受けて おびえています。   

「いらんのは お前だ」

わめきちらす 「わたし」を取り除けば、 

そこには それなりの平和がありました。

彼等は ただ 彼等のペースを 

守っているだけでした。 

「わたし」 の文句を言うこともありません。

なんだか 彼等が 気の毒に思えてきました。

 

友だちに会い 

「180度の意識転換で 笑っちゃったよ 」 

と言うと、 

最近 子宮癌の手術をした その友だちは 

「癌になった後はね、もう そんなこと 

どうでもよくなっちゃうのよ。

自分が出来る分だけやる。イライラしても 結局 

一番傷つくのは自分だもの、 

笑って過ごせれば いいじゃない」

と、お茶を注いでくれるのでした。