別れたからといって
出会わなかったほうが 良かったのだろうか
死んだからといって
産まれてこなければ 良かったのだろうか
壊れたからといって
作らなかった方が 良かったのか
負けたからといって
試合をしなければ 良かったのか
いつまでも
勝ち続けるなんて できるだろうか
いつまでも
出来たてのほやほやで いられるだろうか
無難に生きるって なんだよ
失うことを 怖れて 少なく生きるのか?
君は 造花でいたいのか
咲き誇る花々も
やがては しぼみ 朽ち果てる
だからこそ
その一瞬の輝きが 美しいんじゃないか
娘が三人目の子を授かった時の事です。
夫くんの転勤先で 知り合いもなく
ご近所の方とも トラブルがあって
仕事でも行き詰まり
「この子を産んで育てる自信がない」
と言っていました。
ところが 生まれ出てきたユキくんの
可愛いこと可愛いこと。
たちまち家族のハッピーベビーとなりました。
病気もするにはしましたが
おおむね元気いっぱいで
音楽が聴こえると
奇妙なダンスで皆の笑いを誘います。
太鼓も 手首の柔らかさを活かして上手に叩きます。
太ももの筋肉が発達していて
どこまでも高く登って行きます。
独特の感性と賢さがあります。
ユキくんが三歳になったある日 母親である娘が
みかんの皮を剥こうとしているのを見て言いました。
「みかんの皮はね こうやって
おしりの方に 指を突っ込んで剥くと 剥きやすいよ」
すると ユキくん 即座にこう叫んだのです。
「汚な!」
ある大学で 教授が学生たちに聞いた。
「母親はいない。父親はアル中で失業中。
産まれてくる子は 将来難聴になり
最期は肝硬変で死んでしまう。
君たちは この子は産まれる方が良いと思うかね?」
学生たちは答えた。
「そういう状況ならば 早期に堕胎すべきです」
教授は言った。
「君たちは ベートーヴェンを殺した」